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いのちを救わない優しさ

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私が消防を退職し数年経ちました。救急現場で色々な傷病者を見てきました。指が少し切れ血が出ただけであったり、交通事故、出産など本当に様々だ。そんな救急現場の中で今も私の中で引っかかる事案がある。それが自殺です。この事案に出て大分経ちますが、今も考えさせられます。「救わない優しさ」があるのではないか?私たちの業務は法律上、傷病者を搬送しなければなりません。CPA(心肺停止)であれば胸骨圧迫、人工呼吸が必須となります。では、なぜ救わない方が良いのか?それは、そこまでに至った原因を考えれば自ずと答えは出てきます。学校でのいじめ、会社でのパワハラ、人生に絶望し悩みに悩んだ挙句この方法しか思いつかず行動をとった。仮に蘇生できたとすると、後遺症が残る可能性があります。半身麻痺、悪ければ全身麻痺など...。蘇生した後に後遺症が残れば次は自分で動くことができなくなり、仮に後遺症なく社会復帰できたとしてもいじめやパワハラなどの問題に逆戻り。命を救うことが必ずしも本人を救うとは限りません。それは私たちの自己満足に過ぎません。その人を無理やり現実という地獄に戻すことになるからです。命は大切です。それは誰でも分かりますが、あくまで自分や友人、家族の命だけです。そこに、他人の命を入れてあげる優しさがあるだけでこの矛盾を解決できる。簡単だけど難しい矛盾である。
侍エンジニア 大学生